動物病院取材企画

ウサギさんの歯の検査はどんなことをするの?

不正咬合の予防策も含めてご紹介!
@いぶきの動物病院

歯に関連するトラブルはウサギさんにおいて多いことは多くのオーナー様がご存知のことかと思います。 そのなかで「不正咬合」が代表的な病気です。

今回はそんな歯のトラブルが生じた際にどんな検査を行うのか、いぶきの動物病院の島田先生に教えていただきました!
ウサギさんの歯
ウサギさんの歯は全部で28本あります。

切歯(前歯)は上下あわせて6本、臼歯(奥歯)は上下合わせて22本あります。 この切歯と臼歯は、ともに生涯伸び続ける常生歯です。その伸びる速さは一ヶ月に約10mmと言われています。

歯は高繊維質のフードや乾燥牧草などを食べることにより噛耗させ、一定の長さに保っています。

詳しくは▶ウサギの歯 | セレクション村 アニマルカフェ【イースター株式会社】 (yeaster-cafe.net)
ウサギさんの歯の検査
大きく分けて3つのステップで検査を進めていくと島田先生に教えていただきました。

① 問診
歯が原因と考えられるトラブルの可能性であっても、まずはオーナー様へウサギさんに食べ方やよだれなど生じている症状と問題について問診を行います。

② 視診と触診
問診から口腔に起因するトラブルであると考えられる場合は、ウサギさんの口周りの視診と触診から始めます。ここでは口周りを触ることにより、骨の変形やよだれの有無や量を含めた異常がないかを確認します。

③ 歯の視診
口腔内にも問題が生じている可能性があると考えられる場合には、口腔内の検査を実施します。

どんな器具を使うの?
いぶきの動物病院では口腔内の検査を行う際には「鼻鏡」を使用すると教えていただきました。

「鼻鏡」は主に人の耳鼻科で鼻の中を診る用の検査器具で、ウサギさんの歯をチェックするための器具として使用するそうです。 鼻鏡は左右に広げられる機能があるため、口腔内の検査時にはウサギさんの舌と頬をわけて確認できるメリットがあるそうです!
歯の確認
*動物病院によっては異なる検査器具を使用する場合もございます。

口腔内でも切歯と臼歯を確認する際にはその方法が異なるそうです👀

・切歯とその周辺の確認
切歯周辺を確認する際には鼻鏡ではなく“手”を器具代わりに使用します。 ウサギさんにとっても見慣れない器具よりも手の方が不安や恐怖を与えずに観察できると島田先生は話します。

確認方法はウサギさんの唇をむにーっと優しく動かして切歯周辺を確認します。
歯の確認

・臼歯とその周辺の確認
臼歯を確認する際には検査用器具「鼻鏡」を使用します。

この際にはウサギさんが嫌がって予測外の動きをとる可能性があるため、安全に検査できるように愛玩動物看護師がウサギさんを保定し、獣医師が口腔内の視診を行います。
歯の確認

*ウサギさんの状態と症状の状況によって必要な検査はそれぞれ異なります。必要と判断された場合には、口腔内の検査だけではなく、レントゲン撮影による歯茎(はぐき)の内側の確認を行う場合もございます。
不正咬合だった場合
最も代表的なウサギさんの歯の疾患は「不正咬合(ふせいこうごう)」です。 不正咬合と診断された場合にはどのような治療を受けるのでしょうか?メインではありませんが、少しだけ島田先生に教えていただきました。

噛み合わせを正すために歯を切削するのが主な治療方法となり、問題となっている歯の位置により麻酔の必要性が異なります。

・臼歯中央から切歯側に問題がある場合には、無麻酔にて切削処置を行います(個体により麻酔下で行うこともあります)。

・臼歯中央から奥側であった場合や、切歯側でも困難な位置が問題となっている場合、検査による位置特定が困難な場合には麻酔下で処置を行うそうです。
不正咬合を早期発見するためには?
早期発見するためにはどのような部分をチェックしておくといいのでしょうか? 5つのチェックポイントを島田先生に教えていただきました。

✓今まで食べていた食事の好みが変わる
牧草をよく食べていたのに食べなくなるなど

✓食事時間が長くなる
同じ量を咀嚼して飲み込むまでの時間が長くなります

✓涙が見られるようになる

上顎由来の歯の異常の場合に見られることがあります

✓歯ぎしりをする

✓口に入れた食べ物を落とすようになる

早期発見のためにも「あれ?」と思ったら、放置せずにかかりつけの獣医師にご相談くださいね。
不正咬合を予防するためにできることは?
不正咬合はある日突然生じるわけではなく、徐々に伸長する歯の嚙み合わせが何かしらの原因により徐々に生じることが多いとのことです。

早期発見ができれば治療も比較的軽度の対応で済む可能性が高くなります。 オーナー様が毎日の食生活や生活環境を整えていても時には生じてしまうことはありますが、ウサギさんに関する知識があると重度な不正咬合に繋がる可能性は低いとのことです。 また時には根尖(歯の根っこ部分)の炎症やそのほかの異常から不正咬合をはじめとする歯の異常が生じる場合もあります。

島田先生は、歯の健康を維持する為には食生活を整えることが最も重要であると話していました。

やっぱり牧草が一番大事!
不正咬合を予防するために最も重要なポイントは、“たくさん咀嚼できるイネ科の牧草をたっぷり与える”ことだそうです。

うちの子、牧草苦手…。
ウサギさんの中には乾燥牧草が苦手な子がたまにいます。そんな子に向けた工夫を島田先生に教えていただきましたので、ご紹介します♪

① 柔らかさを変えてみる
牧草は、刈り取り回数に応じて柔らかさが変わりますので、一番刈りから二番刈りに変えてみることによりウサギさんが食べてくれるかも!


② 圧縮強度の異なるものに変えてみる
乾燥牧草は運搬するために圧力をかけることにより圧縮されます。その圧縮強度により牧草の柔らかさが異なるため、ウサギさんが食べてくれるかも!


③ イネ科の異なる牧草に変えてみる
イネ科の代表的な牧草はチモシーですが、そのほかにオーツヘイやオーチャードグラス・イタリアンライグラスなども同じイネ科に属する牧草となります。牧草種により味が異なるため、ウサギさんが食べてくれるかも!

ケージ噛みは避けよう!
ウサギさんの中にはストレス発散や意思表示の一つとしてケージの金網などを齧る子がいますが、歯の健康維持のためには極力金網のような硬すぎるものは噛まないような工夫が必要となります。

そのためにはフラストレーションを発散できるような生活スタイルや環境の工夫により抑えることができると話します。

ストップ!ケージのガジガジ!
① ケージに牧草カバーを設置
ケージの金網の代わりに牧草を齧ってもらいましょう。市販の牧草で作られたカバーを使用するほか、オーナー様自身が乾燥牧草を編んでカバーを作られている方もいらっしゃるそうです!

② 齧り木を設置
野生下でも木の根や枝を食べていることから、フラストレーション発散のためのツールとしては向くとのことです。そして、主に齧る際に使用される前歯の健康維持にも適します。
さいごに
ウサギさんでトラブルの多い歯の検査と不正咬合について今回はご紹介しました。

いぶきの動物病院では初診時の基本的な確認項目として歯のチェックを取り入れているそうです。 早期発見をする一つの方法として、健康診断などで動物病院に行く機会があれば歯科検診のイメージで一緒に獣医師にチェックしてもらうことも良いかもしれませんね。

不正咬合を予防するためにできることをたくさん島田先生に教えていただきましたので、ぜひ一度お家でもウサギさんの食生活と生活環境について見直してみてくださいね♪
取材のご協力ありがとうございました!

いぶきの動物病院