動物病院取材企画

ウサギさんの血液検査、どんな流れなの?

血液検査の流れをご紹介!
おまけで「鎮静」についてもプチ解説!
@マリモアニマルクリニック

ウサギさんの健康診断の時や体調が優れないとき、視診や触診だけではウサギさんの状態がわからない場合がございます。その際に「血液検査」がウサギさんの状態を把握する為の補助となります。

今回は、状態把握の補助となるウサギさんの「血液検査」についてマリモアニマルクリニックの松田先生に教えていただきました!
まずは安全面の確認!
まずは、その子が性格的に安全に採血できる子なのかどうか?
その点の判断が非常に重要とのことです。

ウサギさんは突発的に跳躍する動物で、筋力が非常に強い反面、骨は非常に脆く容易に骨折しやすいのが特徴です。
上記の理由から、ウサギさんには犬や猫に比べ思わぬ怪我をしやすい特性があるため、ウサギさんの性格などによっては、安全に検査を行うために、鎮静をかけて行う場合もあるそうです。
鎮静について
・鎮静と麻酔、同じこと?
「鎮静」と聞くと、「麻酔するの?本当に大丈夫?」と聞かれることもよくあるそうですが、「鎮静」と「麻酔」は異なります。

麻酔と鎮静の違いは?

・麻酔
主に手術を行う際に実施する処置で、意識を完全に消失させます。

・鎮静
麻酔とは明確に異なり、ウサギさんを少しぼーっとさせることで恐怖や不安を軽減させ、検査や軽い痛みを伴う処置を安全に行うためにします。

*鎮静の薬剤を投与している様子

「鎮静」の処置は、超音波検査(エコー検査)など同じ姿勢を一定時間保持しなければならない検査の時に行うことが多いです。またウサギさんの性格によっては採血の際にも行う場合もあります。 さらに「鎮静」は、恐怖によるストレス性の生体反応により“突発的な心拍数の増加、高血圧、そして逆に徐脈や低血圧などの乱高下”が特にウサギさんでは生じやすいので、それを防ぐという重要な目的もあります。

・どれくらい薬の作用がある?
使用する薬の種類にもよりますが、鎮静に使う薬の作用を消す薬(拮抗薬)を使わない場合、多くは数時間、長くても8−10時間程度とのことです。
マリモアニマルクリニックでは検査が一通り終了した時点で、拮抗薬(きっこうやく)を注射し、ある程度いつもの状態に戻った段階でオーナー様の元へ帰るようにしています。

ウサギさんの採血場所
人は腕から採血することが多いですが、ウサギさんはどうでしょう。
採血できる場所は、主に3箇所あります。

 ①耳介(耳たぶ)
 ②前肢
 ③後肢

ウサギさんでは前肢は非常に嫌がりやすく怪我のリスクがやや高くなるため、耳介の血管から採血する場合が最も多いようです。時折後肢から採血することもあるそうです。

・耳介の血管
ウサギさんの耳介は、体温を調整する役割も担うことから、たくさんの血管があります。その中で採血部位として選ばれるのは、おもに耳介の中心部分を走る「動脈」と耳介の縁を走る「静脈」になります。


*上の写真は簡略的に太い血管だけを記したイメージです。

お家のウサギさんも、もしかしたら目視でわかるかもしれませんね👀

採血の手順

ウサギさんの採血は、人と手順は大きく変わりません。

①必要な道具を準備する。

②安全に行うために、保定する。
ウサギさんの安全のためにバスタオルで優しく包んで保定していました。そして恐怖や不安を軽減させるために優しく目を覆ってあげていました!


③採血する血管を怒張(大きく膨らませる)させる。
耳介を温めたり、軽く指でポンポンたたくと怒張します。ウサギさんによっては怒張しにくい子もいる為、時には少量の薬剤を耳介に塗ることもあります。


④採血する。


⑤止血する為に針を刺した場所を圧迫止血する。
動脈から採血した際には、静脈から採血するよりも長めに圧迫止血します。


採血が終わった後は血液を専用のチューブに入れて、必要な項目の検査を機械で行います。 検査項目によっては、高速で遠心分離にかけるなどの前処理があります。


最近ではウサギさんの血液検査がしっかりとできるような血液検査機器が開発されているそうです(左の全自動血球計算装置)!


血液検査では主に2種類の測定機を使用します。
一つは赤血球や白血球などの血球の数を測るための「全自動血球計算装置」。 もう一つは血糖値、腎臓や肝臓の数値、電解質などを測定するための「血液生化学検査装置」です。

機械に血液サンプルを入れて測定をスタートさせたら検査結果が出るまでは、待つだけ♪

血液検査結果を見るときは注意が必要!
血液検査を行ったから、どこが悪いかすぐにわかる!よかった!…と一安心したくなりますが、実はウサギさんの血液検査の結果を見る際には、ウサギさんの特性を考慮してみる必要があると松田先生は話します。 あくまでも一例ですが、例えばどんなことがウサギさん特有の結果となるのでしょうか?

・炎症反応
炎症があった際には「白血球」の数値が上昇するのが一般的です。しかしながら、ウサギさんの場合には上昇しにくいという特性があります。その為、白血球や好中球の数値が正常であったとしても、完全に炎症の存在を否定することはできないそうです。 白血球のみでの判断は難しいことも多いため炎症マーカーを測定することもあるそうです。

・肝臓の状態
肝臓の病気が生じていた際に、肝酵素と呼ばれる項目(GOT、GPT、ALP)の数値が犬や猫と比較して上昇しにくい傾向があります。そのため、肝臓が相当悪くならないと血液検査の数値は上昇してこないそうです。 また肝臓が何かしらの原因で悪くなった際に「黄疸(おうだん)」という症状が現れることがありますが、黄疸の原因となる「ビリルビン」という色素の数値は上昇しないそうです。それはウサギさんの胆汁に含まれる色素は「ビリルビン」ではなく、「ビリルベルジン」という異なる色素が大半を構成しているからです。

・腎臓の状態
腎不全をおこした際に犬や猫ではBUN(尿素窒素)という項目が上昇しますが、ウサギさんでは盲腸内の細菌により尿素が利用されるため上昇しにくいそうです。

このようにウサギさんはイヌやネコと比べて異なる体のつくりや、異なる組成をもつなどの特性があることから、血液検査の結果もウサギさんならではの特徴的な傾向が見られるとのことです。

さいごに
今回はウサギさんの血液検査についてご紹介しました。

血液検査は何かの病気をこれだ!と決めるための検査ではなく、ウサギさんがどんな状態にあるかを確認するための検査です。 今回ご紹介しました項目以外にも様々な血液検査項目があるので、もし何かの機会に検査を行った際には、その検査結果は大切に保管しておきましょうね!

そしてもし気になることがある場合には、まずはかかりつけの獣医師にご相談してみてくださいね。
注意)あくまでこれは一例です。動物病院様によって血液検査の流れが異なる場合がございますのでご了承ください。
取材のご協力ありがとうございました!

マリモアニマルクリック